「名作文学の書き出しを諳んじる!芥川龍之介や夏目漱石など、名作の魅力と感想」
名作文学の書き出しを楽しむ
文学の世界において、最初の一文、いわゆる「書き出し」は作品の印象を大きく左右します。
今回は、学校の授業やテストでもよく目にする名作の書き出しを振り返りながら、その魅力を再確認してみましょう。特に、芥川龍之介の作品に焦点を当て、私自身の感想を交えながらお届けします。
芥川龍之介『羅生門』の書き出し
書き出し:
ある日の暮れ方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。
『羅生門』の書き出しはシンプルですが、何とも不穏な空気を醸し出しています。夕暮れ時の羅生門という舞台設定が、物語全体の暗い雰囲気を予感させ、何かが起こる予兆のように感じられます。学校の授業でもよく取り上げられる作品ですが、その背後にある倫理的な問いについて考えることができるのも、この書き出しが重要だからこそ。
私自身も授業でこの作品に触れたとき、すぐに「この下人はどうなるんだろう?」という思いが湧き、物語に引き込まれました。道徳や正義について深く考えさせられる作品です。
芥川龍之介『鼻』の書き出し
書き出し:
禅智内供の鼻は、長さ五六寸あって、上唇の上からあごの下までぶら下がっていた。
『鼻』の書き出しは、非常にユニークでインパクトのある一文です。登場人物である禅智内供が、ただの僧侶ではなく、鼻に異常を抱えているという点がとても印象的です。この一文だけで物語のユーモアと皮肉、さらには主人公の内面的な葛藤を感じ取ることができます。
学校で読んだとき、「どうしてこの鼻がそんなに気になるんだろう?」と思った記憶がありますが、改めて考えると、誰もが持つ「見た目への不安や焦り」が表現されている部分でもあり、非常に人間味のある作品だと思います。
名作文学の魅力に触れる
文学作品の書き出しがいかに物語に影響を与えるか、そしてその背景にある作家の意図を読み解くことが、読書の深みを増す鍵になります。『羅生門』や『鼻』のように、芥川龍之介の作品は、非常に深いテーマを持ちながらも、シンプルで強烈な印象を与える書き出しが特徴です。
また、これらの作品を通じて、我々が日常生活の中で抱える倫理観や道徳観、人間関係の葛藤に対して、どう向き合っていくべきかを考えさせられます。特に「見た目」や「他者の目」が強く影響する現代社会においては、芥川の作品に触れることで、自己や他者に対する新たな視点を得ることができるでしょう。
本の中で取り上げられていた名作
本書で取り上げられている名作の一部を、書き出しと共に振り返ってみましょう。
- 吾輩は猫である(夏目漱石)
書き出し: 吾輩は猫である。 名前はまだない。 どこで生れたか頓(とん)と見当がつかぬ。 何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。 - 伊豆の踊子(川端康成)
書き出し: 「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追ってきた」 - 枕草子(清少納言)
書き出し: 「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」 - 奥の細道(松尾芭蕉)
書き出し: 「月日(つきひ)は百代(はくたい)の過客(かかく)にして、行(ゆ)きかふ年もまた旅人(たびびと)なり。 舟(ふね)の上(うえ)に生涯(しょうがい)を浮かべ(うかべ)、馬の口(うまのくち)とらえて老(おい)をむかふるものは、日々(ひび)旅(たび)にして旅(たび)をすみかとす」 - 竹取物語(不詳)
書き出し: 「今は昔、竹取の翁といふおのありけり。 野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことにつかひけり。 名をばさぬきの造となむいひける」 - 羅生門(芥川龍之介)
書き出し: 「ある日の暮れ方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。」 - 鼻(芥川龍之介)
書き出し: 「禅智内供の鼻は、長さ五六寸あって、上唇の上からあごの下までぶら下がっていた。」 - 清兵衛と瓢箪(志賀直哉)
書き出し: 「清兵衛という男があった。彼は、普段から働き者の善良な男だったが、ある日、風変わりな事が起きた。」 - 走れメロス(太宰治)
書き出し: 「メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。」 - 夜明け前(島崎藤村)
書き出し: 「木曽路はすべて山の中である。 あるところは岨(そば)づたいに行く崖の道であり、 あるところは数十間の深さに沈む木曽川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる 谷の入り口である。」 - 刺青(谷崎潤一郎)
書き出し: 「其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋(きし)み合わない時分であった。」 - 人間失格(太宰治)
書き出し: 「恥の多い生涯を送ってきました」
まとめ
名作文学の書き出しを覚えることで、その作品の深層に迫ることができます。芥川龍之介の『羅生門』や『鼻』をはじめ、志賀直哉の『清兵衛と瓢箪』、太宰治の『走れメロス』や『人間失格』、島崎藤村の『夜明け前』、谷崎潤一郎の『刺青』など、これらの作品はどれも強烈な書き出しを持っており、物語に引き込む力を持っています。
これらの名作を再度読み返すことで、文学の奥深さを再確認し、自己や社会に対する新たな視点を得ることができるでしょう。


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